概要
有名都市のオーバーツーリズムの問題が取り沙汰される中、地域の過疎は進み、空き家は増え続けています。その二つの課題を解決するために各地に眠る土蔵をリノベーションして、一棟建の宿泊施設に。持続可能な事業の仕組みで、日本全国の地元をUNBOXしていく挑戦です。
蔵をホテルに。全国に広まるブランドを。
The Bath & Bed Team (通称BBT)とは、蔵をリノベーションして宿泊施設を作るプロジェクト。全国にある宿泊施設The Bath & Bed を展開しています。
プロジェクトは、神奈川県の葉山にあった一つの土蔵を地域の住民とリノベーションするところから始まりました。全国に広く建てられた土蔵は、元々保管庫であることから、防寒・防湿の機能が備わるいわば、庶民の歴史的建造物。実は宿泊施設にも向いているという発見がありました。
また、建造物として、全国的に同じ形や大きさのものが多く、一つのモジュールとして広げやすいという利点もあります。大きなお風呂と大きなベッドで、ゆっくりとつくろげる空間を中心に、拠点ごとにインテリアデザインにも特徴をもった、新しい宿泊施設の形を実現しました。
これからの旅はどうあるべきか。観光産業をトランスフォームするには?
日本は世界からの注目度が上がり、観光産業の成長がさらに望まれる一方で、オーバーツーリズムが問題となっています。
日本には四季折々の魅力を楽しめる場所が多くあるにも関わらず、観光客が一部の場所のみに集中しているのが課題。特にリゾートホテルや大きな旅館では、チェックインすればその中で楽しみが完結するため、それぞれの土地の良さを活かしきれていないという現状があります。
さらに、現在日本では地域の過疎化も深刻な問題となっており、空き家や空き施設も年々増加傾向です。
これらの二つの課題を同時に解決する方法として、BBTは注目され始めています。
静かな蔵に泊まり、自分自身に向き合ったり、蔵を出てローカルなお店で食を堪能したり、まちの人と生活の視点を共有したり。そうすることで、まちや人との繋がりが旅の深い思い出になっていきます。「まちと繋がる」というコンセプトと仕組みには、これからの旅のあり方を考えていくきっかけが詰まっています。
関わる人全てを仲間にしたい。
ブランド名をTeamにした狙いとは?
このプロジェクトにはたくさんのステークホルダーがいます。宿泊するユーザー、蔵のオーナー、運営する事業者、そして一つ一つの蔵を応援してくれる共感投資家。さらには、どういう施設になればいいかを一緒に考える地元の住民。エンジョイワークスや電通以外にも、多くのプレイヤーがいることで成り立っています。我々は、そのすべてのプレイヤーを「チーム」と考えました。
ゆえに、ブランド名はThe Bath & Bed “Resorts”や、The Bath & Bed “Hotels”といったものではなく、 The Bath & Bed “Team” と名付けました。
今後もチームを愛し、参加する人が増えることが、事業の成功につながると考えています。
2024年からは、チームのさらなる可能性を広げる取り組みとして、産学連携のプロジェクトにもチャレンジ。金沢大学融合領域観光デザイン学類と共同し、学生たちのプロジェクトとして金沢に新たな拠点を開発しています。
フランチャイズ展開も視野に顧客体験のデザインを一つずつ丁寧に。
事業の広がりとともに、ブランドの直轄ではない、フランチャイジーによる運営のケースも出てきました。クリエイティブチームは、多くのチームメンバーがそれぞれの拠点で蔵をデザインしていくためのルールづくりを進めました。
例えば、拠点ごとのカラーコードの取り決めです。
それぞれの蔵で地域ごとの特色に沿ってメインカラー1色とサポートカラー2色を選択するというルールを作っています。
組み合わせにより幾通りものパターンができるため、蔵の個性を表現しやすく、後から多くの拠点が増えても対応可能な仕組みになっています。
また、 SNSのアカウントは拠点ごとに運用しています。
運用にあたり、ブランドが大切にする表現のコンセプトの認識を合わせる講習なども行っています。
さらには、顧客体験をより特別なものにするため、ブランドのオリジナルプロダクトの開発もスタート。第一弾として、「FURO&SHIKI まちと繋がる風呂敷」を豊島株式会社と共同で生産しました。サーキュラーエコノミーを体現するプロジェクトブランド「FOOD TEXTILE」の生地を用い、蔵の象徴でもある海鼠壁の@鱗文様」と豊穣や家内安全の意味を持つ「千鳥文様」を組み合わせたオリジナルデザインの風呂敷です。FOOD TEXTILEとは、廃棄予定となった野菜や食品の残渣(ざんさ)から染料となる成分を抽出し、その成分を元に日本独自の技術で布を染め、ブランドにかかわる製品を作る取り組みです。
風呂敷はアメニティとしても機能します。
まち歩きの際には荷物をさっと包んで持ち運ぶことができ、「まちと繋がる」手助けになります。また、宿泊客への特別なギフトやBBTのプロモーションなどにも活用しています。
日本全国のふるさとを拓いていくために。持続可能なエコシステムもクリエイティブしていく。
目標は、全国にまずは100棟の拠点をつくることです。
そのために必要なのは、「理に適った」持続可能なエコシステム。
オリジナルプロダクトや宿泊地での体験プログラムはもちろん、投資家向けの説明会や、ファンド募集のプロモーション、PRやあたらしい蔵を探す活動も、知恵と工夫をこらす重要なフィールドです。
事業が持続的に成長していくために必要なブランドの力とはなにか。
日々の活動の中で、プロセスの全てにおいて、ブランドマネジメントを担当することが電通クリエイティブチームの役割です。